悪夢(※実際に見た夢)


随分大人数の映画のロケ隊だった。 時代物の妖怪映画だったが、子供向けではなく、かなり大掛かりなセットも組まれていた。
ロケ地の選定には大分苦労して、やっと見つけたのがこの山奥の地だった。
観光と縁のないこの地では、この人数がまとまって泊まれるような施設はなく、
スタッフは何カ所か離れた宿に分散して宿泊していた。
撮影は順調に進み、クライマックスの滝での殺陣も満足のいく出来だった。
クランクアップの日、メインセットの前で打ち上げが行われ、
スタッフ一同は散々大騒ぎした挙げ句、三々五々それぞれの宿泊先に帰って行った。

そこは小さなペンションで、割と新しくはあったが、精々10人程度が泊まれるくらいの所だった。
帰ったスタッフはオーナーに頼んで、食堂を借りて更に酒を呑んでいた。
誰かが、「これからあの滝に行ってみようぜ」と言ったが、
「なんかあの滝って曰く付きらしくてさ、酒屋のおばちゃんがあんまり近付かない方が良いって言ってたよ」と反論された。
「なんだ、怖いのか」
「だってさ、一応山だし、危ないだろ」
「山たって、ここは一番近いから、精々15分じゃんか」
「やめとけやめとけ、足滑らして怪我でもしたら馬鹿臭いぞ」
「なんだよ、じゃ他の宿にでも呑みに行くか?」
その辺りに話は落ち着いて、3,4人ほど連れ立って他の宿に向かった。

残ったスタッフは、そのままそこで呑み続けた。 もう4:00近い頃だった。
誰かが廊下の人影に気が付いた。
「なんだよ、脅かすなよ、誰だ?」
現れたのは雄雌の人狼だった。
スタッフはパニックに陥ったが、勇気ある一人がライターに火を付けて、健気にも追い払おうとした。
その時、人狼が静かに言った。
「馬鹿な真似はよせ。何もしないから、ついて来い。」
数人が怖々後に従ったが、暫くして彼らは数人の子供を抱いて戻った。
子供たちはいずれも人ではなかった。
半人半獣、それも様々で猿もいれば兎もいたし、何とも判断の付かない物もいた。
怖いと言うより不思議と可愛かった。

人狼は椅子に座り、「まぁ、座ってくれないか」と言った。子供達はうつむいて後ろに立っていた。
幾分恐怖の去ったスタッフは、言われるままに座った。
「どう言うことなんだ?」
「あぁ、説明するよ。俺にも詳しいことは分からないが、なんでも世界でも症例の少ない病気の一種らしいんだ...」
人狼の話は続いたが、医学知識のないスタッフ達には分かったような分からないような話だった。
漸く空が白み始めた頃、人狼の話は終わった。彼らは人の姿に戻っていた。オーナー夫婦だった。
「それで原因は?」
「どうもね、食事や水が関係しているらしいんだ。何しろ、発症したのがここに来てからだったんでね。」
スタッフ達はまたパニックになったが、オーナーは落ち着いて言った。
「あんたたちもここで一ヶ月ほど生活してたが、もう直帰る頃だろう?話さなければならないし、話すなら今日しかないと思ったのでね」
「で、俺達にどうしろと?」
「誰かうちの娘と一緒になって欲しいんだ」
「え?」
小さい子供達の中で一人だけ年頃の娘がいて、はっとするほど可愛い娘だった。
「結婚して欲しいんだよ、娘と」
「なんで...」
「ちょっと問題があってね。どうもこの病気は腎機能に負担が掛かるらしく...」
「一定期間毎に健全な腎臓成分を摂取し続けないと死亡する確率が高いとかで...」
「俺達も歳だし...」
オーナーの目に狂気が宿った...
「だからね、娘と結婚して子供を増やして欲しいのさ...」


ここで大汗かいて目が覚めた...(^^;;
夢の内容は会話も含めてほぼこの通り、しかも”映画”さながらのカメラワークでした(笑)


[封印]