お鈴が子供の時分から、玉は居た。
明日、嫁に行く今日も縁側で陽に当たりながら寝ていた。
常のことながら親の決めた縁談であった。

哀しげな面差しのお鈴がふらふらと縁側に出て、玉を撫でた。
...今日でお別れだね...
...清吉さんといっしょになるのなら笑って言えるのに...
...でも、お前のせいじゃないものね...
思いを言葉にすることもなく、お鈴は愛しげに玉を撫で続けた。
お鈴の目の縁にようやく涙が浮かんだ頃、
玉はお鈴に一瞥をくれると欠伸を一つして庭に降りていった。

時が経ち、陽は西に傾いていた。
先程からの玄関先の騒々しさに驚愕の色が加わった。

いつのまに戻ったのか、縁側の玉が笑った...


[封印]