水滸小説書房


 水滸伝小説の情報じゃよ。現在、掲載数42じゃな。



新・水滸伝  講談社
全四巻。吉川英治氏著。執筆途中で亡くなられたため、未完。七十回本と同じあたりまでの内容。最初に読んだ水滸伝です。読み易いです。さすが大衆文学の大御所です。

水滸伝 伏龍たちの凱歌  光栄
吉岡平氏著。オリジナルストーリーの水滸外伝。正直言って、こんな面白いとは思わなかった。2時間で読み切ってしまいました。4話から成っていて、史進・李忠、項充・李袞中心に李逵チーム、魏定国・単廷珪、張清・董平がそれぞれ主人公。特に2話と3話はいいなぁ。よくキャラクタ掴んでると思います。お薦め。

快僧魯智深  踏青社
歳森薫信氏著。水滸外伝と銘打ってますが、百二十回本のストーリーを魯智深中心に書いた小説です。魯智深の人物描写が良く書けていて、金翠蓮への仄かな慕情(何と言う表現じゃ!)とかもあるのでした。魯智深や宋江の行動原理を作者は静かに追っています。お薦め。

大水滸伝  講談社
上下二巻。志茂田景樹氏著。ファンの方には申し訳ないんですが、私にはちょっと許せない...本当に「水滸伝」が好きな人は近寄るべからず。毒です。

SF水滸伝  講談社
石川英輔氏著。舞台を宇宙にした水滸伝。でも、出て来る好漢は9人。<闇の霊>に操られ腐敗した政府高官を倒して、天球星に平等な社会を取り戻せ!面白いですよ。

魔界水滸伝  角川書店
栗本薫氏著。ク・リトル・リトルと来て水滸伝と来たら読むしかないでしょう、と野性時代を読んでいました。途中でだれて来たのにもめげず読み続け、文庫に切り替えて読んでいった結果、あまりに発刊が遅いので挫折しました。面白いとことは面白く、つまらんとこはとことんつまらんと言う極端な小説ですな。

武蔵野水滸伝  富士見書房
上下巻。山田風太郎氏著。たまたま近所の古本屋にあったんで買って見た翻案小説。赤城山を根城にして、国定忠治・清水の次郎長・大前田栄五郎・笹川の繁蔵・武居の吃安たち、実は幕末期の有名な剣客が乗り移った侠客たちが大暴れ。水滸伝テイスト十分で結構面白い、と思いきややっぱり山田風太郎だった...

無法者  講談社
佐藤雅美氏著。内容は天保水滸伝なので、あまり関係ありません。でも、一応水滸伝と付くんでちょっと載せてみました。実はうちの家系って、天保水滸伝にまんざら縁がなくもなかったりするんですよ、これが(謎)

妖異金瓶梅  廣済堂出版
山田風太郎氏著。本来の金瓶梅なら載せる場所が違うんだけど、水滸アナザーワールドな部分があるんでこっちに載せました。金瓶梅でしかも山田風太郎ですから、内容的には団鬼六も三舎を避くと言ったところ。18禁かも(笑)武松が潘金蓮に惚れちゃうんだなぁ、この本だと。巷で噂の映画もこんな感じなのだろうか...

柴錬水滸伝 われら梁山泊の好漢  講談社
柴田錬三郎氏著。時代劇作家柴田錬三郎氏の水滸伝で、独特の句読点多用の文章はここでも生きていた!これ、馴染めない人が多いらしいんだなぁ。慣れちゃうと平気なんだけど。文章はさすが柴錬ですな。うまいもんです。ですが、この本は高唐州攻めで締めくくられていて、108人集結までは語られません。念のため。

水滸伝物語  講談社
園城寺健氏著。1955年発行の児童向け水滸伝。児童向け故、閻婆惜は登場しません。呑み屋の女将閻婆が手紙を拾って、宋江から金をゆすり取ろうとして殺されます。高キュウの梁山泊攻めまでなんだけど、捕まった高キュウが反省して、先頭に立って招安のための運動をした、と言うのには笑ってしまった。最後に付いてる広告が時代を感じさせて泣けてくる。

わが水滸伝  芳賀書店
田中英光氏著。昭和23年発行の本の再版本。でも、昭和40年だけど。聞いたことない人だけど、結構有名な人らしい。内容は120回をベースにした小説で主人公が李逵!この方は素朴で純情な李逵を愛してますね。李逵が絡まない部分はさっと飛ばして、李逵だけを追った内容です。その分、江州以前の李逵についても書かれていて、水滸伝小説としてはちょっと珍しいかも。私的には面白いと思います。でも、入手し難いみたい。この本はこの方の全集の1冊で短編集となっています。

水滸一百単八将外伝  大衆文芸出版社
周宝忠氏編著。中国の本でまだ読んでません(汗)ただ、序を見ると民間伝承みたいなものを集めて編集したみたいなことが書いてあって、しかも一〇八人全員分あるもんで、つい買ってしましました。自分も読みたいから、宣和遺事が終わったら今度はこれの訳でもやろうかなぁ、なぁんて...当てにしないでね(汗)

西遊記・水滸伝物語  アルス
宇野浩二氏著。昭和2年の古い児童書。西遊記物語と水滸伝物語が一冊になっています。話の展開がすごく早くてまるで流し素麺のように進んで行きます。祝家荘戦とか青州戦は飛ばされてます。120頁そこそこで書いているので、こうなるのも仕方ないかな。それでも、招安まではそれなりにストーリーが展開していますが、招安以降はわずか8行で書かれています。宋江たちの結末は書かれていません。朱富が朱貴の兄で”朱福”と言う名前、なんて言うご愛敬も...挿し絵は良いです。

悲華水滸伝  中央公論社
杉本苑子氏著。遂に読みました、杉本水滸伝。世間では賛否両論のようですね。恐らく、”小説”として評価した人は賛、”水滸伝”として評価した人は否なんじゃないかな?どの小説もそうだけど、古典と呼ばれる物を題材にしている物は元々それ自体が文学だから、そのまま書いたんじゃ翻訳と変わらない。それをオリジナルにするところに小説家の苦心があるんでしょうね。そう言う意味では、面白い水滸伝小説だと思います。確かに「そこまでしなくても」と思えるところもないではないけど、そう言うところには必ず作者の意図がある!原作も大分読まれたようで、七十回までの「何で?」と言うような箇所には、ほとんど作者なりの回答が用意されています。几帳面な人なんだろうな、杉本さんて。”水滸伝”だと思って読んでしまうと、その辺りのオリジナリティやきっちりしたところが原作の味を殺しているとも言えるから、気になるのかも知れませんね。

群星、梁山泊に翔ける  河出書房出版
谷恒生氏著。水滸伝の翻案小説。と思って読んだら、何だこりゃ?出来の悪い抄訳みたい...あんまし、調べ物しないで書いたのかな?小説なんだから、悲華みたいに多少羽目外したって面白く書けばいいのに、何故か原作と変えてあるところは却ってつまらなく書いてある(汗)李逵の九十五斤の蛇矛ってなんだ?好漢達もなんだか一回り卑小な人物設定だし、文章も重たいなぁ...あ、あとがき見たら書いてあった。水滸伝に仮託して、徽宗が書きたかったのか...この人の『魍魎伝説』はワイルドで面白くて結構好きだったのに、残念だ...

少年少女世界の文学25 東洋編2 水滸伝他  小学館
土屋由岐雄氏訳。昭和46年刊の児童書です。このシリーズ、川端康成監修なんだって。一応120回本ベースで、1行づつながら征遼・征田虎・征王慶・征方臘が書かれてます。と言うことは、99%が71回までと言うことですね。閻婆惜は出てくるけど、金に目が眩んだことになっていて、潘金蓮西門慶の下りもさらっと書いてあるあたりはお子ちゃま向け。柳柊二さんと言う方の綺麗なカラー挿し絵がいっぱい入ってます。うちの子にこれから読ませようっと。しかし、阿Q正伝・ベトナム民話・宝のひょうたんって言うカップリングは謎だ。

中国講談選  平凡社
立間祥介氏編訳。揚州講談を採録したものの編訳で、『三国志』『水滸伝』『西遊記』『説岳』『包公案』からそれぞれ一節づつです。『水滸伝』からは「武松の虎退治」で、”出門倒”を呑むところから”虎退治”までです。元々”講談”だから、”聞いてなんぼのもん”だろうけど、面白いです、これ。原典と多少違って(名前、渾名とかも違うのです)、さりげなく細かい部分が語られていて、いかにも”講談”な感じ。話が活き活きしてますな。『水滸伝』以外もなかなか。解説の講談の歴史も中々面白いです。お薦め!

世界名作全集55 水滸伝物語  講談社
高垣眸氏著。昭和32年に出版された子供向けシリーズの水滸伝。本自体の装幀も挿し絵とかも、「昔こんなのあったなぁ」と思わせるような懐かしい感じの本です。内容は招安までなので、100回本・120回本どちらが元かは分かりませんが、面白いところは比較的忠実に書かれています。子供向けの中ではお手軽だし、最初に読ませる水滸伝としては良いかも。林冲の奥さんが妹だったり、智取生辰綱で2桶目の酒の味見を白勝がしたり、とちと変えてある所もあります。閻婆惜親子は顔見知りの呑み屋で、武大が西門慶に殺された理由はふとしたもめ事、李逵は黄文炳を喰わない辺りは、お子さま向けとしては定番ですね。祝家荘戦、北京の盧俊義救出は省略されてます。

世界少年少女文学全集 東洋編 水滸伝西遊記  創元社
奥野信太郎氏訳。昭和29年に出版された子供向け全集本。ちなみに西遊記の方は魚返善雄氏訳です。一〇八人集結までだから、71回本がベースかな?最初の伏魔殿の話と高きゅうの出世部分は省略されています。が、それ以外は全てのエピソードが語られていて、抄訳とは言え中々侮れません。面白いところは沢山書かれているので、子供が読んでも水滸伝テイストは十分味わえます。設定も変えていなくて、子供向けにありがちな男女のシーンの改竄もなく、表現がストレートにならないように上手く書かれていますね。好漢もほとんど登場していますが、最後の東平府東昌府で登場する5名だけ名前が出てきません。子供にお勧め!

大型挿図本 水滸故事系列  知識出版社
A5サイズの中文書籍の児童向け水滸伝で、八冊一セットになって箱に入ってます。百二十回ベースだけど、章立ては百二十回じゃありません。日本のと同じように、西門慶と潘金蓮はさらっと書いてあるみたい。大型挿図本と言うだけあって、挿し絵が割と多いですね。で、文章と絵を書いてる人が一冊ずつ違うので、色んなタッチの絵が楽しめますよ。子供向けのせいか、中国語初心者の私でも、比較的分かり易いかも。何処に入れようか悩んだ挙げ句、子供向けと言うことでここにエントリしました(笑)

少年少女世界文学全集 東洋編(2) 三国志水滸伝柳斎志異  講談社
村上知行氏訳。昭和34年発行の児童向け全集ものの一冊です。まだありましたね、村上さんの訳(笑)でも、子供向けなんで抄訳です。文体も子供向けかな?ストーリー自体は黄文炳を殺す辺りまでです。ちなみに李逵は黄文炳を喰いません(笑)閻婆惜はすげー悪女っぽく書かれてますが、潘金蓮はちょろっとです。村上さんの悪女の判断基準なのか、潘金蓮を書くと生々しくなるからなのかは不明ですね(爆)挿し絵は福田貂太郎さんなんで、修道社版村上水滸伝と同じ組み合わせですけど、違う絵になってます。カラーの絵も2枚あります。

痛快 世界の冒険文学 水滸伝  講談社
嵐山光三郎氏著。憶えてますか?そう、週刊いいとも増刊号編集長の、あの嵐山光三郎さんの子供向け水滸伝です。挿し絵は中国の譚小勇さんと言う方で墨絵風でかっちょいいです。巻末に痛快ミニ百科と称して地図とか武器とかの説明があって、解説は『水滸伝を読む』の伊原弘先生が書いてます。で、本文ですけども、子供向けとは言え、これが結構面白い。短くまとめるために当然本編の設定とは変えてる所がいっぱいありますが、何より著者本人が「水滸伝は不良少年の為の本だ!」と言う、不良に対する愛情を伴った思い入れで書かれているので、著者独特の水滸世界観になっていて好感が持てます。好漢たちの語る台詞も面白くって、通勤電車で読んでてつい笑ってしまったぜ(笑)やっぱ、うちの子にはこれから読ませよう、うん。騙されたと思っていっぺん読んで見て!

新宿夜叉  祥伝社
谷恒生氏著。これはですねぇ、水滸伝でも水滸の翻案でもありません。水滸をネタに使った小説、と言うべきですな。んで、どんな内容かってぇと...え〜と...新宿歌舞伎町に根を張る元全共闘の暴力団の親分がいてですね...李逵がヤクザの首を斧でぶった斬ってですね...ゾンビみたいな宋江が出てきてですね...ヤクザの抗争が起きてですね...肉屋の鄭が殺されてですね...元いたセクトの名前が「梁山泊」でですね...潘金蓮が殺されてですね...妖術使いが出てきてですね...歌舞伎町が伏魔殿らしくてですね...エログロバイオレンスなんです(汗)砒素か鴆毒か斑猫か鳥兜並みの猛毒ですので、近寄ったら即死します(洪水汗)

津本陽歴史長編全集第二十一巻 新釈水滸伝  角川書店
津本陽氏著。津本陽さんと言えばご自身も剣の心得のある方で、書かれる本もちょっと求道モノ的な本が多いので若干の心配はあったんですけど、まぁ吃驚!ちょっと近頃にない良著ですな。雰囲気的には駒田訳と吉川英治版を足して二で割ったようなと言うか、翻訳と小説の中間的と言うか...兎に角、すばらしいっす。スタンダードになりうる出来映えだと思います。が、惜しむらくは楊雄が潘巧雲を成敗するところで終了で、最後に一頁「こうして好漢たちは梁山泊に集まるのであった」的な終り方してることです。これって『公明新聞』に連載されてたのが打ち切られたからなんだろうな。ちょっと、公明新聞!名前が名前なんだから最後まで連載しろってば(笑)

こども名作全集 水滸伝  日本ブッククラブ
園城寺健氏著。昭和四十七年発行の児童向け全集の中の水滸伝。これ、近所の公民館に子供と行って見つけました。だから、うちにupされてる中で唯一の蔵書外本ですね(笑)内容は昭和三十年刊の園城寺氏著講談社版「水滸伝物語」と同じで、挿し絵を伊藤悌夫さんと言う方が書かれています。

絵画文学故事詞典 水滸伝故事  上海辞書出版社
”詞典”とありますけど、普通の子供向け水滸伝ですね。「拳打鎮関西」で始まって「梁山大聚義」で終わるんで、七十回本ベースです。各ページ毎にカラー挿し絵があって、中々綺麗。大体一章あたり5ページくらいだから、中国の子供には丁度良いんでしょうね。

岡本綺堂戯曲選集2  青蛙房
昭和34年に発行された限定一千部の本です。岡本綺堂さんと言えば『半七捕物帖』で有名な方ですが、その方の歌舞伎の台本集で、昭和初期に演じられたもののようです。で、この中に水滸関係が二つありまして、一つは李逵がお袋さんを迎えに行く所の下り、もう一つは京劇の「野猪林」と同じ林冲落草の下りです。李逵の方は李雲が別人になっている所と枝葉のおまけ以外はほぼ原作通り、林冲の方は多少アレンジされていて「風雪山神廟」の後に史進と魯智深が登場したりします。でも、お話自体は流石によく出来ていて、今これを歌舞伎でやってくれるんなら、すっ飛んで行きたいところっすよ(笑)

普及版世界文学全集 第一期  集英社
清水義範氏著。タイトル見ると何だか凄さげですが、要するにそーゆー全集に採用されるような作品のパロディ短編集です。この中にちゃんと入ってます、水滸伝(笑)で、どーゆー設定かと言うと、世の中のつまらない結婚式場のあり方に義憤を覚えた宋本保義が、料理が美味しくて、引き出物のセンスが良くて、アンチテーゼとしてのド派手な式を主旨とした”水滸殿”なる結婚式場を作るとゆーお話(笑)従う好漢は、呉用一(くれよういち)・公入勝(きみいりまさる)・林冲男(はやしおきお)・花井栄(はないさかえ)・魯智深司(ろちしんじ)・路俊義(みちとしよし)・朱本武(しゅもとたけし)・秦明(はたあきら)・張本順一(はりもとじゅんいち)・燕青男(つばめあおお)etc.(笑)敵の首魁は結婚式産業連盟会長の高橋九(たかはしひさし)さんです(笑)えと、一応70回本ですな(爆)全部で26ページの小品ですけど、なかなかよ(笑)

みだれ絵双紙 金瓶梅  講談社
皆川博子氏著/岡田嘉夫氏画。見たとおり『金瓶梅』小説なんですが、ただのイロモノと思いきや、意外に面白いパロディでした(笑)文章が巧いし、ストーリーが面白いし、挿し絵が不気味で全ページにあって、その挿し絵の空白に文章があると言う装幀も面白いっす。んで、各章のタイトルがねぇ、章回小説にあるような漢字の対句みたいになってるんですけど、それに付いてる読み下しがめっちゃくちゃ洒落てて感服しました(笑)作者の方は中国関係専門ではないようですが、結構ちゃんと調べてあって、巻末の参考文献以外にも、「あぁ、あの本読んでるな」とか想像が付いたりします。普通、『金瓶梅』で『水滸伝』の好漢と言えば武松なんですけど、この本でオイシイ(?)のは燕青だな、殺されちゃうけど(爆)

忠臣水滸傳 浮牡丹全傳  絵入文庫刊行会
山東京伝著/北尾政演画。馬琴先生の御師匠、山東京伝が書いた読本の処女作です。この本は大正15年刊の排印再版本ですが、本来は寛政〜享和年間(約200年前)に刊行されました。内容的には、ストーリーの骨組みは竹田出雲の『仮名手本忠臣蔵』を使って、話を構成する部品として『水滸伝』を使っています。所謂、翻案小説になるんだけど、『水滸伝』を使って新しい話を書くんじゃなくて、既存のお話をアレンジしたって辺りが、他と一線を画するところ。でも、仇討ちと言うコンセプトと登場人物名と場面設定以外はほとんどオリジナルと言ってもいいでしょう。『仮名手本忠臣蔵』は戯曲だから読むのもしんどいけど、これは読本なんですごく面白いっす。で、ちなみにカップリングされている『浮牡丹全伝』の方も『牡丹燈記』とかからの翻案小説で、内容は妖怪小説。これも面白いのよね〜(笑)で、『忠臣水滸伝』の方は、ちょっと一般的には入手しにくい物なので、呉学究之教房で現代語訳します。

江戸戯作文庫 傾城水滸伝  河出書房出版
曲亭馬琴著/歌川豊国・国安画。馬琴先生の書いた草双紙で、これは1984年河出書房創業100周年記念出版の影印本です。本来の『傾城水滸伝』は十三篇で馬琴病没のため途絶していて、これも十三篇まで出す予定だったみたいだけど、二篇までしか出てません。この本、実は江戸時代の大ベストセラーで江戸の水滸ブームのきっかけになった本なんですけど、文学的評価はイマイチなんですよね。元々庶民向けの本なので、全頁に挿し絵があって、その隙間に文章が書いてあるんですわ。明治時代に一度だけ排印本として出版されたきりなんで、貴重だし良い本だと思います。内容的にはこれこそ水滸の翻案本で、鎌倉時代を舞台に、封印されてた百八人の遊女の魂が転生して、活躍するお話です。翻案なんでストーリーはほぼ水滸のまま、但し主要登場人物の男女が全部逆になってます。本の構成としては、上に影印、下に排印、最後に解説と水滸伝のあらすじが付いてます。この解説がまた、日本での水滸ブームの資料として参考になります。水滸で言えば、「風雪山神廟」までしかないけど、これもいつか現代語訳してみるか...

時代映画 NO.51  時代映画社
昭和三十四年発行の時代劇映画雑誌で、中に『血斗水滸伝 怒濤の対決』の全編のシナリオが入ってます。が、これって内容は『天保水滸伝』です(笑)知ってたのに買っちゃったのよね(笑)でも、キャストは凄いのよ、この映画。市川右太衛門、中村錦之助、大川橋蔵、東千代之介、里見浩太郎、若山富三郎、大河内伝次郎、美空ひばり、大友竜太郎、片岡千恵蔵etc.所謂、”オールスターキャスト”って奴ですね。彼ら時代劇スター達に敬意を表して載せておきます(笑)

世界の名作図書館41 水滸伝三国志  講談社
松枝茂夫氏・那須田稔氏訳。昭和45年刊児童向けシリーズの一冊。水滸は松枝さんです。七十一回本ベースですが、うまく端折れて書けてると思いますね。潘金蓮・潘巧雲辺りの生々しいところはさらっと流してるのは、児童書の定番と言えるでしょう。でも、小衙内はきっちり頭割られてます(汗)大きな字で150ページほどのものですが、江州騒動までで全体の85%程度、後半は子供にはつまらないと値踏みしたのかな?挿絵はカラーが多く、描かれたのは峯梨花さんと言う方。綺麗なんだけど、な〜んか違う...

日本すゐこ傳  
松村操著。明治十五年刊の水滸伝翻案物。国会図書館のデジタルライブラリ収蔵。挿絵は松斎吟光。体裁は和装排印本です。『水滸伝』を幕末に置き換えた翻案なので、登場人物は当然日本人です。太田進太郎・史進之助・朱野武右衛門・陳田達五郎・楊葉春四郎・魯智野深右衛門てな感じ(笑)文語で句読点なし、活字にもちょっと慣れないと読めないものもあるかも。例えば、「こと」「候」「ハ」等々、今は使われない崩し字活字が頻繁に出て来ます。内容的には「魯提轄拳打鎮関西」辺りまで。どうも著者が亡くなって中断したようです。

水滸傳  ポプラ社
村上元三氏著。昭和二十五年刊の児童書。挿絵は宮田青抱さんと言う方。内容的には多少端折ってるものの、比較的原文に近いと思いますが、林冲が梁山に辿り着くところまでです。なので、初めてこれを読んだ子供は、王倫も百八星の一人と勘違いすること請け合い(笑)でね、寨主的には困っちゃうんだなぁ...「村上知行」さん訳を読んだ時、その文章スタイルが「村上元三」さんの『次郎長三国志』みたいだと書いたんだけど、「村上元三」さんの書いた『水滸傳』があるとはなぁ(笑)低層の庶民とか山賊連中は、しっかり『次郎長三国志』口調でしゃべってますよ(笑)

伝法水滸伝  集英社
山口瞳氏著。昭和五十二年刊。全然水滸伝じゃありません(笑)てーか、タイトルでわかるかな?「天保水滸伝」関連の短編が2つ+αが入ってます。山口さんの数代前のご先祖は、世に名高い笹川一家VS飯岡一家の喧嘩に横須賀から飯岡方助っ人に行ったソノ筋の人なんですが、この喧嘩が浪曲で「天保水滸伝」として有名になったわけですな。で、その「天保水滸伝」のどこが『水滸伝』かてーと、さっぱり『水滸伝』でない(笑)まぁ、強いて言うなら、やくざが主人公ってとこかな?(笑)ちなみに私と山口さんは遠い縁戚にありまして、うちも本来の在は横須賀だったりするわけで、明治くらいまでは堅気の商売じゃなかったりしたらしく...

少年少女世界名作全集40 水滸伝  講談社
伊藤貴麿氏著。昭和三十八年刊だから同い年(笑)挿し絵は大石哲路さんと言う方。子供向けの常として、濡れ場シーンはさらりとかわしています。祝家荘攻めは端折られてますが、それ以外は割と忠実かも。全員揃ってハッピーエンドなんで、七十一回本ベースですね。最初に3ページほど「この物語について」と言うのがあるんですが、著者が中国にいた当時の講談に触れていたりして、ちょっと異色。巻末の解説も子供相手にしちゃ、やけにマニアック(笑)でも、読者がもう少し大きくなったら面白いと、吉川訳・村上訳・駒田訳・松枝訳を薦めている辺り、とっても好感が持てます(笑)

桃源郷  講談社
陳舜臣氏著。本当はこっちに入れるべきでないんですが...いや、入れるべきなのか...話は遼末に始まる、東は日本から西はスペインまでを股に掛けた、隠れマニ教集団が安息の地を求めるお話です。で、何で水滸?と思うかも知れませんが、マニと言えば方臘っす!当然登場します。迫害されて挙兵した方臘に対して、何と!宋江・呉用は隠れマニで、討伐を隠れ簑に方臘を救おうとしちゃうわけです(笑)が、それに失敗した梁山泊集団は、事もあろうに金国に圧迫されて西で再挙を図る、これも隠れマニの耶律大石の傭兵部隊となるのでありました(^_^;;;ま、メインのストーリーからすると、あくまで宋江たちは端役なんですけどね...

新編水滸傳 桃花の巻  徳和書房
中島幸三郎氏著。昭和二十二年初版の青年向け水滸伝だそうで、下巻も出す予定だったようですが、さて出たのかどうか...でも、ページ数は200ページ強の薄いものなので、上下揃ったところで推して知るべし(笑)挿し絵はないけど、装幀はイイ感じっす。最初に3ページくらいの解説があって、魯迅の話や馬琴の話、パール・バックの話が出てきたりして、ちょっとビックリ。内容は、清風山の直前までですが、宋江と閻婆惜の馴れ初めが書いてあるので、70回本ベースじゃありませんね。訳ではなく、オリジナルのなかなか味のある文章で、青年向け故か、閻婆惜やら潘金蓮やらの辺りも逃げずに状況が書かれてます(笑)

新選世界名作選集 新編水滸傳  東光出版
福田清人氏著。昭和三十三年刊の子供向け水滸伝。前のとは違い、こっちは5cmくらいのエラク厚い本ですが、紙質の違いなので380ページくらいです。挿し絵は白黒のざっくりした絵なんだけど、結構良いかも。内容は100回本ベースです。なんでかって?なんとこの本、対遼戦だけで33ページも費やしてるんです!かつてこんな子供向けの本があったでせうか(驚)林冲登場から山神廟までが18ページ、劉唐登場から楊志二龍山入りまでが16ページ、対抗できるのは武十回の42ページと江州騒動の43ページですから、如何に特異かお判りかと思うっす。宋江の叛詩も読み下し&現代語訳並記で親切。エピソードの取り上げ方に差はあるけど、一応ほとんどのエピソードが含まれてるのも、この手の本にしては珍しいっすね。

才子必読吃驚草紙 絵入自由出版社New!
嶋崎鴻南編/花笠文京閲。これも国会図書館デジタルライブラリ。明治16年刊行文語の本だけど、タイトル通りの面白い本です。序を読む限り、昔の偉そうな奴だって間違いがいっぱいあるんで、ちょいとおちょくってやろうと思ったのよ的なことが書いてあります(笑) で、水滸関係で言うと、「評水滸羅貫中罵馬琴 」と言うのがあります。「水滸を評して羅貫中馬琴を罵る」...いきなし過激(笑) 11ページくらいの短い文章だけど、結構面白いす。どんなことが書いてあるかってーと... 八犬伝も完成して大評判、世間にちやほやされて天狗の馬琴先生を訪ねて、遠来の羅貫中がやってきます。羅貫中は踏ん反り返って「馬琴と言うのはあんたかな?あんたの『水滸伝』批評に納得し難いことがあるし、あんたの『八犬伝』も『水滸伝』の真似っこで大したもんじゃない。ちゃんちゃらおかしいので、クレーム付けてやろうと思って来たぜ。」とおっしゃる。馬琴先生、身に覚えがあるので何とか持ち上げて誤魔化そうとするんですが、羅貫中も然るべき者にてけちょんけちょんに馬琴先生をやっつけます(笑) いや、『八犬伝』は面白いけど、確かに馬琴先生ってちょいと頭の高い変わり者だったって話もあるので、こんなこと書かれちゃうんだろうなぁ(^_^;

水滸伝 日本テレビ放送網株式会社New!
水滸伝脚本グループ原案。昭和48年刊の日テレ水滸伝の...なんだろう?原作は横光だし、シナリオでもない、本当はこうしたかった本なのかな?(笑)いずれにしても、ドラマとも原典とも違います。が、思いの外原典水滸伝のエピソードが生かされていますな。人の名前とか地理はドラマ同様オリジナリティ炸裂ですが(笑)ちなみに、この本の最後高Qが討たれる流れって、「えっ、そんなんでええのん?」て感じだったりしちゃうけど、まぁ黙っとこう(笑)脚本グループに名を連ねているのは菊島隆三さん・山田信夫さん・高岩肇さん・舛田利雄さん・宮川一郎さん・池上金男さんの6名で、菊島さんは黒澤明監督の『用心棒』『椿三十郎』等の脚本、山田信夫さんは『戦争と人間』等の脚本、高岩肇さんは市川雷蔵の頃の『眠狂四郎』シリーズ等の脚本、舛田利雄さんは脚本も書いておられますが『トラ・トラ・トラ』や『宇宙戦艦ヤマト』シリーズの監督、池上金男さんは『雲霧仁左衛門』『四十七人の刺客』等の脚本、宮川一郎さんも多数の映画ドラマの脚本を担当した方です。日テレ開局20周年記念ドラマだったんですが、結構気合い入ってるのがメンツを見ても判る気がしますねぇ。