<道々>
どれ、呑み屋まではちょっとありますでな、道々歩きながらでも水滸伝を簡単にご説明いたそうか。
さて、どこから話したものでしょうかな。
一言で言ってしまうと、
「宋の時代、湖に立て籠もったアウトローたちが、悪徳官吏と戦う痛快無比なお話」
となるんじゃが、もう少し説明いたしましょうかな。
水滸伝と言うのは、字を見ても判る通り、”水のほとりのお話”と言う意味の題名になり申す。
この”水のほとり”はどこかと言うと、山東は済州にある水郷梁山泊のことなんじゃが、ご存じですかな?梁山泊は周囲が支那里で八百里、多くの河川と繋がる巨大な湖と言うか湿地帯とその中に広がる周囲百里あまりの大木生い茂った山を持つ陸地で、ここに寨があり申した。
そして、そこに籠もって世間の悪役人どもと戦った男たち、彼らが”好漢”と呼ばれる者たちで、様々な理由で世間から追い立てられ、この山に集って来るのですな。集った好漢は壱百零八人、三十六人の大親分と七十二人の小親分、それに従う無数の手下たち全てが水滸伝の主人公ですのじゃ。
時は北宋末期、政治は腐敗し、いよいよ遼からの圧迫が強くなり出した徽宗皇帝の頃が時代背景となっており申す。
実は水滸伝は半ば実話で、北宋の頃に実際にあった「宋江率いる賊」のお話に、各地で語られた任侠話の講談が結び付いて、体系化されて明の頃に小説となったものなのじゃが、この作者ははっきりしており申さぬ。その後も人気に煽られて、各種の本が作られて今にいたっておりますのじゃ。