火之巻
神算子蒋敬でございます。孫子と聞いちゃあ黙っておられません。蕭譲兄ぃに一杯おごる約束で替ってもらいました。一番美味しい所なんで、ちょっと高い目の店を指定されたんですが...
まぁ、気にせず行ってみましょうか。
読み下し文
孫子曰く、兵は国の大事なり。死生の地、存亡の道、察せざるべからざるなり。(計篇)
解 説
孫子の冒頭でございます。孫子は、「戦争は国家の一大事である。軍隊の死活問題である戦場や国家存亡の方策の選択を行うには、十分な熟慮が必要である。」と言っておられます。戦争は、思い付きや感情論等で行うべきものではない、いろいろ検討して損得を見極めろと言うことですな。
だから、「パワーマックG3 400がほしいぃ!メモリは256Mにして、モニタはEIZOのFLEX SCAN21インチだなぁ!プリンタはやっぱ、沖のマイクロラインPSだべ」なんて言うと、「お前、そんなものどこに置けるんだよ。そんな金はどこから捻り出すんだよ!ちっとは考えて物言えよ!!」と孫子に怒られます。
読み下し文
兵は詭道なり。故に能なるもこれに不能をしめし、用なるもこれに不用をしめし、近きもこれに遠きをしめし、遠きもこれに近きをしめす。(計篇)
解 説
「戦争はだましあいである。だから、可能であっても不可能なように敵に見せかけ、有能であっても敵に無能に見せかけ、近くにいても遠いように敵に思わせ、遠くにいても近いように敵に思わせる。」これに続いて、敵の体制、意識を崩すことが語られます。こちらの思う通りに敵を誘導できれば、次に行う戦術に引っ掛かり易くなる訳ですね。要は、戦場でのイニシアチブを取れと言うことです。
読み下し文
それ未だ戦わずして廟算して勝つものは算を得ること多ければなり。未だ戦わずして廟算して勝たざるものは算を得ること少なければなり。算多きは勝ち、算少なきは敗る。いわんや算無きにおいてをや。吾これを以ってこれを観るに勝負あらわる。(計篇)
解 説
「開戦以前に祖廟での検討で勝利を確信するのは、彼我の比較をして勝算が多いからである。敗戦を確信するのは、勝算が少ないからである。勝算が多ければ勝つし、少なければ負ける。まして、勝算が無いと言うのでは話にならない。この勝算の多寡によって戦争の結果を観察すれば、既に勝負は歴然としている。」
ここで比較するのは、単に兵力、装備だけではありません。良く、「天の時、地の利、人の和」などと言いますが、このことです。そう言うもので敵味方を比較検討すれば、感情論の入る隙間もなく、論理的に優劣が判明すると言うことですな。
「身長は10cm高くて、体重は20Kg重い。経歴は元柔道の国体選手で、1部上場企業の御曹司。裏の社会にも顔が利くらしい。」なんて奴とは、喧嘩する前から勝負が見えてますな。そんなの相手に真正面から策もなく喧嘩を売るのは、匹夫の勇でしょう。
読み下し文
故に兵は拙速を聞くも、未だ功久を睹ざるなり。(作戦篇)
解 説
「だから、戦争は下手でも速く終わらたと言うことを聞いても、いまだかつて上手で長引かせたと言う例を見たことがないのである。」
有名な一節ですが、人によって解釈が大分別れるところですな。これの前には、戦争を行うことで発生する莫大な出費についてが語られますので、素直に「避けられない戦争であれば、コストパフォーマンスの良い戦いを心掛けよ」と理解しております。
「私は完璧主義ですので、お客様が最高に御満足いただける状態になるまでは、例えお客様と言えども御引渡はできません。」と、引っ越し荷物を道路に山積みしたオーナーの前に立ちはだかる住宅メーカーの熱血営業マン。「火事でしたか。御困りでしょう。汚いけど、安くてすぐ入れる一戸建がありますよ。」と言う気の良い不動産屋。あなたなら、どっちを選びます?
読み下し文
是の故に百戦百勝は善の善なるものにあらざるなり。(謀攻篇)
解 説
「こういうわけで百回戦って、百回勝つのは最善の方法ではないのである。」
百回戦って、百回勝つのが何故悪いか?不思議に思われるでしょうが、これが孫子の優れたところでございます。つまり、百回実戦を行った時点で既に多くの損失を被るので、そんな無駄はやめて敵が戦う前に負けたと思わせる状況を演出しろと言っている訳です。戦争は国際政治上の施策実現の為の一手段でしかありませんから、例えば相手国内に反乱を起こさせるだとか、敵国と隣接する各国と同盟を行うだとか、腕力対腕力にならないよう頭を使って敵を屈伏させることですな。
読み下し文
故に曰く、彼を知りて己を知らば、百戦してあやうからず。彼を知らずして己を知らば、一勝一負す。彼を知らずして己を知らざれば、戦うごとに必ずあやうし。(謀攻篇)
解 説
「だから、敵情を理解して、味方の状況も把握していれば、百回戦っても危険はない。敵情が不明で味方の状況は把握していれば、勝ったり負けたりする。彼我双方の実情を知らなければ、戦うたびに必ず危険である。」
これも有名ですな。孫子を知らなくても、この一節だけは知っている方も多いでしょうな。いつの時代でも、戦争に情報は欠くことができません。情報が無ければ、行き当たりばったりで戦うことになりますから、当然勝算が低くなります。不確実性を嫌う孫子ですから、こんな博打のような戦争は許せないのでしょうな。
戦争ですから危険がないと言っても命の危険がない訳ではなく、想定していない事態に遭遇することは少ない位の意味だと考えます。
ロンリコパープル(アルコール度数:七十数%)を前にして、男達は考えた。
「俺はあんまり呑めない。この酒は死ぬほど強い。呑まないのが御利口。」
「俺はあんまり呑めない。この酒は知らない酒。取り敢えず呑んで見るべ。」
「今日はなんだか呑めそな気分。こんな酒知らないけど、行け行けぇ。」
彼らの2時間後をレポートにして提出すること。
では、続きは後といたしましょうか。では。