<武挙>
名家出身、武挙通過、青面獣 楊志でござる。それがし以外に武挙を語れるものはおるまい。
科挙、というのをご存じの方は多かろうと存ずるが、武挙をご存じの方は居られようか?恐らく、殆ど居られまい。科挙は文官選考試験の仕組みだが、武挙はそれに対して武官選考試験の仕組みのことだ。まぁ、文官優位の我が宋朝では、知名度が低いのも止むを得ぬが...
一応、梁山泊ではわしと韓滔だけが武挙に通っておる。
さて、科挙もそうだが、武挙も実は一発試験ではないことを知っておるかな?
武挙は、
・武県試
・武府試
・武院試
・武郷試
・武会試:中央で行う。
・武殿試:天子がご覧になる。が、御前試合とかはない。
の段階があるんだな。全ての段階に合格したものが、武進士と呼ばれる武官資格の最高峰だ。
で、一体どんな試験かと言うと、
・騎射:馬上から三射。一本でも当れば合格。総外れ、落馬等は不合格。本数で優良佳。
・歩射:五十歩離れた円的に五射。一本でも当れば合格。本数で優良佳。
・技勇:以下の三種目
・開弓:八十斤、百斤、百二十斤の弓を引きしぼる。重さによって優良佳。
・舞刀:八十斤、百斤、百二十斤の一丈の青龍刀の演武。重さによって優良佳。
・てつ石:二百斤、二百五十斤、三百斤の石を一尺以上持ち上げる。重さによって優良佳。
・内場:孫子、呉子、司馬法の指定箇所の清書。学科試験。
武郷試になると更に、
・地球:高所にある玉を馬上から射落とす。
どの段階の試験も概ね同じような内容で、矢の本数が違ったりする程度だな。特に学科試験である内場は、カンニングしてても大目に見られたし、字が違ってても笑われる程度で、重要視されていないんだ。まぁ、武官の選考試験だから、頭が悪くても良しとしたんだろうが...
武郷試以上の合格は武官への就職が可能だが、そこまで来ると殆ど最後まで受験するようだな。合格者数に枠があるから、合格するのはいずれも上位者と言うことになる。
だが、そこまでしても、武挙は世間からも軍隊でも重んじられないんだな。特に軍隊では、試験の成績なんぞ関係ないからな。実際の腕っ節と兵卒の信頼がなけりゃ、現場はやっていけんよ。エリートは兵卒に嫌われるんだな。叩き上げが幅を利かす所以だな。
思えばわしも、北京では未熟だったことよ...