<酒>
酒は醸造供応の責任者である、おいら笑面虎 朱富の管轄でござんす。
ご存じの如く、梁山泊の連中は浴びるほど酒を呑むんでやすが、さてどんな酒を呑んでいたか気になりやせんか?。
実はよく判りやせん。おっと、怒んなすっちゃいけませんぜ、本当なんだから。
とは、言うもののこれで終わりじゃあ、おいらの面目が丸潰れなんで、ちょいと無い智慧搾って考えたんでやすが、何分がさつ者のことなんで学者先生みたいなりっぱな意見じゃあござんせんので、悪しからず。
さて、「水滸伝」中に酒の記述は多いんでやんすが、最初に印象に残るのは智取生辰綱の白勝兄ぃの白酒でござんす。別に白日鼠 白勝の酒だから白酒ってぇわけじゃないんで。吉川・清水両先生の完訳によれば、どぶろくってことになってるんでやすな。まぁ、字だけ見ると肯けるン。駒田先生の方はそのまんま白酒。
実は今の中国では白酒は蒸留酒のことで、いわゆる焼酎なんでやすが、文献上では何時頃から焼酎を造ってたか判らないン。最初に文献上に焼酎が出て来るのは大宋なんすけど、南蛮の酒として出て来るんだそうで。でも、道教では唐の頃から水銀の蒸留技術を持ってるんで、下地はあるんですよ。そんで、大宋では醸造技術に大きな進歩があったことが分かってるんで、焼酎は造られ始めていた可能性は大でやんすね。
で、おいらが注目したのは武松兄ぃが景陽岡で呑んだ透瓶香、またの名を出門倒って酒なんで。
この酒、”三椀にして岡を過ぎず”ってぇくらいですから、強いに決まってますな。そんな強い酒、焼酎だと思いやせんか?今の茅台酒(まおたいしゅ)が55%くれぇですから、似たようなもんすかねぇ。
もう一つ、大体中華ってのは、南は米食って北は麦中心の穀類なんで、すると原料は麦か高粱じゃねぇかと思うんで、へぇ。
想像して見てくだせぇ。山の好漢が肉食いながら、強い高粱かなんかの焼酎呑んでる姿を。なんか絵になると思いやせんか?