<水滸画>
「孫新之酒肆」に因んで、江戸時代の水滸画についてちょっとだけ...
今では見る影もないが、江戸時代の水滸伝の盛り上がりは想像以上のものがあったようじゃな。詳しい話は高島俊男氏著「水滸伝と日本人」に出ておるが、翻訳、翻案、題名のもじりが目白押しじゃ。有名な人では、山東京伝、滝沢馬琴、柳亭種彦なんぞが水滸伝をなんらかの形で書いとったようじゃ。
そうした本編そのものとは別に、割と早くから水滸伝の絵も書かれていたようじゃよ。幽霊画で有名な鳥山石燕が「水滸畫潜覧」と言うダイジェストの絵本を書いたのは、最初の翻訳が出てから二十年後、馬琴の「新編水滸画伝」の初編の出る二十五年前だからの。
「新編水滸画伝」は文章を馬琴が書いて、挿絵は葛飾北斎が描くと言う黄金コンビの作った本じゃな。葛飾北斎は言うまでもなかろう。馬琴は「南総里見八犬伝」で有名じゃが、あれも水滸伝の翻案なんじゃな。じゃが、馬琴は最後まで書かずに途中で投げ出して、高井蘭山と言う人が続きを訳し続けたんじゃよ。
それから二十年程して、歌川国芳が最初の水滸画シリーズを出して、大当たりしたんだそうじゃ。この頃は馬琴の「傾城水滸伝」が当って、水滸伝がブームになっていたらしくての、タイミングが良かったんじゃな。
これに気を良くしたのか、はたまた彼も水滸伝が好きだったのか、いやもう水滸伝シリーズの絵を山程描いたようじゃよ。ちょっと並べてみると...
・通俗水滸傳豪傑百八人之一個
・通俗水滸傳豪傑百八人之一個
・通俗水滸傳豪傑百八人之一個
・通俗水滸傳豪傑百八人之内
・水滸傳豪傑百八人之一個
・通俗水滸傳豪傑百八人
・風俗女水滸傳豪傑壹百八人之内
・狂画水滸傳豪傑一百八人之内
・水滸傳豪傑雙六
etc.
上に同じタイトルのシリーズがあるんじゃが、全部別のものじゃ。版元が違ったり、別の時期に出したりじゃ。
それから、狂画と付いた奴。狂画とは滑稽画のことで、この人は有名な人なんじゃよ。だから、「狂画水滸傳豪傑一百八人之内」は他の物と違ってかっこよくないんじゃ。所謂、武者絵ではないんじゃよ。
この歌川国芳の水滸画、嘘か本当か知らないが、江戸時代から現在まで刺青のデザインとして珍重されているんだとか...水滸伝ファンなら背負ってみるか、倶利伽羅紋々を(笑)
月岡芳年は幕末から明治にかけての人で、浮世絵じゃがどことなくリアリティがあるようじゃの。西洋画を見る機会が増えたからじゃろか?まぁ、わしは絵に関してはまるっきり素人じゃから、あんまり当てにはならんな。御自分の目で観てくだされ。