<丹>
道教のお話故、また私、入雲竜の公孫勝の登場ですな。
「封神演義」「西遊記」などで良く仙人が炉で薬丹を作りますな。金丹と言う奴で、不老長生とか一発でなんでも治す薬として表現されています。
あれがあれば、安道全先生なんかいらないのに、お前はなぜ作らんのか?とお思いでしょう。
我が道教では、あの手の鉱石を調合して仙人に至る薬を作る法を外丹法と呼びます。
そもそも”丹”とは丹砂、すなわち水銀の元のことで、外丹法ではこれを他の材料と調合して丹炉で製造する煉丹術を以って仙人への道としておりました。ちなみに丹はその色から”赤”と言う意味を持っていますから、倭国の花札で「赤丹」と言うのは何か変ですな。
閑話休題。が、水銀はご承知の如く毒性の強いものですから、うかつに服用すると死に至ります。不老長生の薬を飲んで死んだのでは洒落になりませんが、実際唐代の皇帝は李姓のために(老子の名が李耳だった)道教に帰依していて、この丹薬で何人も命を落とされております。
そして、外丹法に対して、人体内の気を制御することで成仙する内丹法と言うのがあります。前段階として、五穀や肉などを絶つ辟穀やそれによる体力の低下を補う漢方薬などの服餌を行い、導引・胎息など気を体内に充満させる呼吸法、体内に宿る神が抜け出すことを止め、体外の神を呼び入れるために行う守一と呼ばれる瞑想法などで体内の気を活性化させ、満たすのです。
神仙に至る道ですから、簡単にはお教えできませんが、まぁそんな感じの、一言で言えば修行による成仙法が内丹法ですな。
で、私は本伝を読まれても判るように外丹法は行わず、修行による仙人への道を選んだので金丹は作らないのですよ。それに安先生の活躍場所も考えといてあげないといけませんしね。
外丹法は卑金属を貴金属に変える、と言うおまけも付くのですが、これは水銀の力が大きいのですよ。
水銀は金属でありながら液体で、大方の金属と合金化できます。この特性を利用して、金銀鉱石と合金化したものから水銀を蒸留し、金銀の精製を行いました。また、金メッキも同じ原理の応用で行いました。粉末化した金と水銀を混ぜ合わせて練って、金属に塗り付けた上で火であぶることで水銀のみを蒸発させるのです。
外丹法が中国の錬金術と呼ばれる所以ですな。