陶宗旺 | 「あぁ...」 |
阮小五 | 「何でぇ、しけた面して。」 |
陶宗旺 | 「そう見えねぇかも知れないけど、悩みがあるのよ。」 |
阮小五 | 「どうした、言ってみな。」 |
陶宗旺 | 「鍬振るいてぇんだ。」 |
阮小五 | 「鍬って、おめぇのあの?」 |
陶宗旺 | 「おうさ、あの鍬だ。」 |
阮小五 | 「振るえばいいじゃねぇか、戦ん時に。」 |
陶宗旺 | 「俺、戦出して貰えないし...」 |
阮小五 | 「そうだったなぁ...」 |
陶宗旺 | 「ただ耕してぇんだよ、俺ぁ...」 |
阮小五 | 「な、なんでまた?」 |
陶宗旺 | 「なんてんだろなぁ、血が騒ぐってのかなぁ。」 |
阮小五 | 「...」 |
陶宗旺 | 「時として、忘れてた百姓の本能が蘇るって言うか...」 |
阮小五 | 「やりゃあ、いいじゃねぇか。」 |
陶宗旺 | 「そうなんだけど、頭領だろ。一応、俺も。」 |
阮小五 | 「おぉ、りっぱな頭領だ。」 |
陶宗旺 | 「そう言う小者みたいなことすると、うるさいんだよ。上が...」 |
阮小五 | 「いずこも同じ秋の夕暮れ、ってね。」 |
陶宗旺 | 「だからさ、こう、時々無性に...」 |
阮小五 | 「実は、俺もだよ。」 |
陶宗旺 | 「へぇ、やっぱり。」 |
阮小五 | 「だから、俺は趣味にしてる、魚取るの。」 |
陶宗旺 | 「あ、なるほど。」 |
阮小五 | 「趣味なら文句は出ねぇからさ、どこからも。」 |
陶宗旺 | 「...」 |