呉用 | 「奴ら、まだ懲りんようだな。」 |
裴宣 | 「なにか情報が入っておりますか?」 |
呉用 | 「うむ。ちっとは智慧を使うようになってなぁ。」 |
裴宣 | 「はて、如何様な?」 |
呉用 | 「皆に配給している酒をな、途中でカツアゲしておるようでなぁ...」 |
裴宣 | 「カツアゲですか...中坊並み...」 |
呉用 | 「が、訴えたら痛い目に遭うぞと脅されて、皆泣く泣く我慢しておるようだな。」 |
裴宣 | 「それで、耳に入ってこないと言うわけで...」 |
呉用 | 「わしの手の者が拾ってきた噂でな、どうやら自分の配下に飽きたらず、他にまで手を広げておるらしい。」 |
裴宣 | 「り、梁山泊の好漢ともあろうものが情けない...」 |
呉用 | 「こうなれば、こっちも意地だな。」 |
裴宣 | 「何か策でも?」 |
呉用 | 「ちと姑息だが、倭国の落語にある手を使おうかと思っておる。」 |
裴宣 | 「不肖にして、私にはなんのことやら...」 |
呉用 | 「白勝に手伝って貰わねばならぬのだが...」 |
裴宣 | 「白勝?」 |
呉用 | 「うむ。あの漢に、天秤棒で二つの酒桶を振り分けで運ばせる...」 |
裴宣 | 「して?」 |
呉用 | 「一度目は本物の上酒を入れておく。そしてわざと奴らに襲わせる。奴らは味を占める...」 |
裴宣 | 「ふむ。」 |
呉用 | 「二度目の桶の中身は別物じゃ。」 |
裴宣 | 「なにやら判ったような気が...」 |
呉用 | 「お食事中の方には申し訳ないが、桶には小水を入れておく。」 |
裴宣 | 「ははぁ、そして白勝に『中身は小水だ』と言わせておいて...」 |
呉用 | 「左様。奴らは『うそを申すな』と言いつつ、ぐっと...」 |
裴宣 | 「で、怒ったところを白勝が『だから小水だと』...」 |
呉用 | 「奴ら、『こ、この正直者めが!』と落とす...」 |
裴宣 | 「でも、掛りますかね、こんなオーソドックスな手に?」 |
呉用 | 「奴ら、今まで全てオーソドックスなオチだろうが。」 |
裴宣 | 「なるほど...」 |