楊林 | 「なぁ、こんな話知ってるか?」 |
劉唐 | 「なんでぇ?」 |
楊林 | 「昔むかし、あるところに正直で貧乏なおじいさんとおばあさんが住んでいました...」 |
劉唐 | 「ふん。」 |
楊林 | 「おじいさんはいつものように山に売り物の薪を切りに行きました...」 |
劉唐 | 「薪売りが商売とは石秀みてぇだな。」 |
楊林 | 「一仕事終えたおじいさんは、切り株に座っておばあさんの作ってくれたおむすびを食べようとしました...」 |
劉唐 | 「おむすびってなんだ?」 |
楊林 | 「倭国の食い物で炊いた米を握って、塩振ったもんだ。」 |
劉唐 | 「物知りだな、おめぇ。」 |
楊林 | 「それほどでも。その時、おじいさんはおむすびを落としてしまいました...」 |
劉唐 | 「あー、もったいねぇ...」 |
楊林 | 「おむすびころりん、ころころりん。おじいさんはおむすびを追いかけました...」 |
劉唐 | 「拾って喰えるかもしれねぇしな。」 |
楊林 | 「おむすびころりん、ころころりん。おむすびは山肌に開いた穴に落ちてしまいました...」 |
劉唐 | 「じいさんも無念だったろうに...」 |
楊林 | 「おじいさんが穴のところで残念そうにしていると、穴の中から歌声が聞こえてきます...」 |
劉唐 | 「妖怪変化だな...」 |
楊林 | 「『おむすびころりん、落ちてきた。美味しいおむすびありがとう。』おじいさんは面白くなって、もう一つ残っていたおむすびを穴に落としてみました...」 |
劉唐 | 「貧乏な癖に物好きな...」 |
楊林 | 「穴からはまた楽しい歌が聞こえて来ましたが、うれしくなったおじいさんは誤って穴に落ちてしまいました...」 |
劉唐 | 「だから、やめろってのに...」 |
楊林 | 「穴の中でおじいさんが目を開くと、そこは白勝の住まいでした...」 |
劉唐 | 「え?あいつ、穴蔵住まいだったのか...」 |
楊林 | 「白勝は、『おじいさん、おいしいおむすびをありがとう。お礼にごちそうします。』と言って、庶民でもこれ以上無いほど最低の食事をごちそうしました...」 |
劉唐 | 「最低の食事...」 |
楊林 | 「おじいさんは遠慮して、『もう、満腹じゃ。そろそろ帰りましょう。』と言って、帰っておばあさんに一日の話しをしました...」 |
劉唐 | 「そりゃ、遠慮するわなぁ...」 |
楊林 | 「残り少ない米のご飯を貧しいおかずで食べようとしていると、とんとんと戸を叩く音がします...」 |
劉唐 | 「ほう、客が来たか...」 |
楊林 | 「おじいさんが戸を開けてみると白勝が立っていて、『おじいさん、お土産を渡すのを忘れました。このお酒をどうぞ。』と言って、担ってきた酒桶から酒を汲み出して、二人に呑ませました...」 |
劉唐 | 「ま、まさかその酒...」 |
楊林 | 「いつ眠ったのか、おじいさんたちが目覚めると、晩ご飯は食われていて、米櫃の米も無くなっていました。コレデドンドハレ。」 |
劉唐 | 「白勝〜(泣)」 |