施恩 | 「出門倒って、二杯しか呑ませてもらえないとは知らなかったなぁ。」 |
武松 | 「え?確か、三杯って言ってたと思うけどなぁ、あの親父。」 |
施恩 | 「武行者にあんなに惚れた女がいたのも驚きだったし。」 |
武松 | 「女?」 |
施恩 | 「武大さんって、子供の頃大きい病気したんだってねぇ。」 |
武松 | 「金眼彪、さっきから何言ってんの?」 |
施恩 | 「いや、なるほど〜と思ってさ。」 |
武松 | 「何がなるほど?」 |
施恩 | 「だって、『三碗にして岡を過ぎず』だったら、三杯呑ませたら誰も景陽岡越せないじゃん。」 |
武松 | 「あ、気付かなかった...」 |
施恩 | 「それと二竜山上った後もずっーと行者の格好してるのも不思議に思ってたけど...」 |
武松 | 「いや、それは無精なだけ。駄洒落でなく...」 |
施恩 | 「嘘〜、鴛鴦楼で殺した女の菩提を弔おうってんでしょ。」 |
武松 | 「どこのどいつがそんなデマを...」 |
施恩 | 「義兄弟じゃん。隠すなよ〜。」 |
武松 | 「武大あんちゃんも、病気なんかしてねぇし、俺が知ってる限り、ずーっと三寸丁の黒樹皮だったぜ。」 |
施恩 | 「でも、理由もないのに兄弟でそんな違うなんて、ちょっと言いにくいけど、お袋さんが浮気したのか、とか言われたんじゃない?」 |
武松 | 「確かにそんなことも言われたが...」 |
施恩 | 「だから、病気だったって聞いたんで、後天的なもんなら、お袋さんは無罪なんだなぁと安心したんだよ。」 |
武松 | 「あ、ありがとうよ。で、そりゃ一体なんの話なんだ?」 |
施恩 | 「悲華水滸伝。」 |
武松 | 「げっ、あの噂の書物には、そんなことが...」 |
施恩 | 「他にもあるよ。えーと...」 |
武松 | 「ちょっと貸せ。これ、貰っとくぜ。」 |