楊林 | 「ここだけの話だが、こんな話知ってるか?」 |
鄒潤 | 「お前、またやってるのか...」 |
楊林 | 「聞くのか、聞かねぇのか?」 |
鄒潤 | 「聞く聞く、内緒で。」 |
楊林 | 「昔々、あるところに親切で大変仲の良いおじいさんとおばあさんが住んでいました...」 |
鄒潤 | 「ふんふん。」 |
楊林 | 「ある夏の日、おじいさんはおばあさんに美味しい物を食べさせてあげたいと思いました...」 |
鄒潤 | 「ふんふん。」 |
楊林 | 「おじいさんたちは日々の食事にも事欠く有り様で、余分なお金はありません。そこで、笠を作ってお金に替えようと考えました...」 |
鄒潤 | 「ふんふん。」 |
楊林 | 「おじいさんは作った笠を街に売りに行きましたが、ひとつも売れません。夕暮れまでにはまだ時間がありましたが、おじいさんは諦めて家に帰ることにしました...」 |
鄒潤 | 「ふんふん。」 |
楊林 | 「帰る道すがら、おじいさんが家の直ぐ側まで来ると、いつものお地蔵さんが立っています...」 |
鄒潤 | 「ふんふん。」 |
楊林 | 「おじいさんは、この炎天下に笠も無しでは暑かろうと思って、売り物の笠を全部あげました...」 |
鄒潤 | 「ふんふん。」 |
楊林 | 「ところが、一人分笠が足りません。おじいさんは、自分の被っていたぼろぼろの笠を取って、それもお地蔵さんに被せてあげました...」 |
鄒潤 | 「ふんふん。」 |
楊林 | 「家に帰ったおじいさんはおばあさんにその日のことを話し、ごちそうしてあげられなかったことを詫びましたが、おばあさんは『気持ちだけで十分じゃよ。それに善いことをしなすったんじゃから。』と慰めて、貧しい食事を共にしました...」 |
鄒潤 | 「ふんふん。」 |
楊林 | 「その日の夜、おじいさんたちが寝ていると、『うんとこよいしょ、どっこいしょ。うんとこよいしょ、どっこいしょ。』と言う声が聞こえてきます...」 |
鄒潤 | 「ふんふん。」 |
楊林 | 「おじいさんが不思議に思って窓から覗くと、笠を被った棗売りたちが車に財宝をどっさり載せて曳いているのが、月明かりで見えます...」 |
鄒潤 | 「それは...」 |
楊林 | 「おじいさんは、お地蔵さんたちが笠のお返しに財宝を持ってきてくれたのだと思いました...」 |
鄒潤 | 「...」 |
楊林 | 「とんとん、と叩く音におじいさんが戸を開けると、そこには呉軍師が立っていました。軍師はおじいさんとおばあさんに言いました...」 |
鄒潤 | 「な、何て?」 |
楊林 | 「『見てしまいましたね。大義の為には小義は捨てねばなりません。いつか懇ろに葬って差し上げますから、成仏してください。それっ!』と言うと、二人に阮三兄弟は襲いかかりました。コレデドンドハレ。」 |
鄒潤 | 「...それでいいのか、我らの大義はっ(泣)」 |