楊林 | 「ここだけの話だが、こんな話知ってるか?」 |
蔡福 | 「遂に俺にもやってきたか!」 |
楊林 | 「嬉しいか?」 |
蔡福 | 「すげー、嬉しい!早く早く!」 |
楊林 | 「では。昔むかし、あるところに欲張りでパワフルな顧おばさんと親切で非力な孫おじさんが住んでいました...」 |
蔡福 | 「おー、いきなり辛口。」 |
楊林 | 「ある日、顧おばさんが店の奥で洗いものをしていると、何時の間に入り込んだのか、お腹を減らした李応が売り物のご飯を食べているではありませんか...」 |
蔡福 | 「何故?大官人ともあろう人が...」 |
楊林 | 「人にはそれぞれ事情ってもんがあるのさ。怒った顧おばさんは李応を捕まえて鋏で舌をちょん切ろうとしました...」 |
蔡福 | 「顧おばさんならやりかねないな...」 |
楊林 | 「それを見つけた孫おじさんは、『これこれ、可哀相なことをしてはいかんよ。』と、李応を逃がしてあげました...」 |
蔡福 | 「優しいねぇ、孫新も。」 |
楊林 | 「それから暫く経ったある日のこと、仕入れに出た孫おじさんは道に迷ってしまいました...」 |
蔡福 | 「ふむ。」 |
楊林 | 「気が付くと、孫おじさんは李家荘に辿り着いて、李応と出会いました...」 |
蔡福 | 「そんな遠くまで仕入れに行ってたのか...」 |
楊林 | 「李応は、『先日は危ないところをありがとうございました。御礼にご馳走いたしましょう。』と言って、大宴会を開いてくれました...」 |
蔡福 | 「まぁ、当然かな。」 |
楊林 | 「宴も果てて、帰り道を聞く孫おじさんに、李応はお土産を持たせようとしました...」 |
蔡福 | 「太っ腹だなぁ、さすがに。」 |
楊林 | 「李応は『大きなつづらと小さなつづらのどちらにしますか?』と孫おじさんに聞きました...」 |
蔡福 | 「当然、遠慮したんだろ?」 |
楊林 | 「無欲で非力な孫おじさんは、『小さなつづらで結構です。ありがとう。』と言い、帰って行きました...」 |
蔡福 | 「あはは、俺と一緒じゃん、貰っちゃうんじゃ。」 |
楊林 | 「馬鹿、自分で落としてどうする!店に帰り着いた孫おじさんは、その出来事を顧おばさんに話すと貰ったつづらを開けてみました...」 |
蔡福 | 「何が入ってた?」 |
楊林 | 「するとびっくり!つづらの中身は錠銀が詰まっているではありませんか!顧おばさんは、自分もお土産が欲しくなりました...」 |
蔡福 | 「そうだろう、そうだろう。」 |
楊林 | 「顧おばさんは孫おじさんに道を聞くと、李家荘へと向かい、李応と出会って屋敷に招かれました...」 |
蔡福 | 「おぉ、いよいよだな。」 |
楊林 | 「李応は『先日は命を助けていただいてありがとうございました。御礼にご馳走いたしましょう。』と言いましたが、顧おばさんは『そんなもんはいらないから、お土産をおくれ。』と言いました...」 |
蔡福 | 「現実家だ...」 |
楊林 | 「仕方なしに李応は、『大きなつづらと小さなつづらのどちらにしますか?』と顧おばさんに聞きました...」 |
蔡福 | 「でかい方を?」 |
楊林 | 「顧おばさんは、『そんなもんはいらないよ。あたしゃ、これを頂くよ。』と言うと、蔵ごと担いで帰っていきました...」 |
蔡福 | 「...あり得るかも...」 |
楊林 | 「顧おばさんと孫おじさんは大金持ちになりましたが、爪に火を灯すようにお金を貯めてきた李応は貧乏になってしまい、杜興と一から出直しましたとさ。コレデドントハレ。」 |
蔡福 | 「どいつもこいつも...」 |