楊雄 | 「しかし、祝家荘の宿ん時は危なかったなぁ。」 |
時遷 | 「うん。俺、もう駄目だと思ったよ。」 |
石秀 | 「何たって、こっちは三人だったしなぁ。」 |
楊雄 | 「そうだよなぁ、俺達じゃなきゃ、皆捕まってたかもな。」 |
時遷 | 「俺、捕まったけどね...」 |
石秀 | 「でも、たかが鶏一羽だもんね、きっかけが。」 |
楊雄 | 「嫌だよな、セコい奴って。」 |
時遷 | 「俺のこと?」 |
楊雄 | 「ほれ、あそこの番頭よ。銭出すって言うのに、鶏返せなんて言うか、普通?」 |
石秀 | 「まぁ、普通は言わないな。昔話の中くらいだろうね。」 |
時遷 | 「でも、腹減ってたし、旨かったでしょ?」 |
楊雄 | 「お〜、中々料理の才能あるかもな、お前。」 |
時遷 | 「裏芸なんですよ、料理。料理担当の統領でも良いくらい...」 |
石秀 | 「馬鹿。じゃ、他の料理もできるのか?」 |
時遷 | 「当然でしょ。豚でも牛でも魚でも野菜でも、何でもござれだよ。」 |
楊雄 | 「そりゃ、凄いな。」 |
石秀 | 「それじゃ、何であの時鶏なんか盗んできたんだよ。何かいなかったのかよ、他に。」 |
時遷 | 「あそこ、鶏しかいなかったし。でも、遠くの方に牛が見えたな、あの時。」 |
石秀 | 「だろ。なんで、牛盗んでこないんだよ。やっぱ、お前セコいぞ。」 |
楊雄 | 「そりゃ、無理だろう。デカイし、目立つし、第一牛なんか盗んだって...」 |
石秀 | 「哥々、俺は元肉屋だぜ。忘れたかい?」 |
時遷 | 「そうだけど、バラせたところで喰いきれないでしょ、三人じゃ。」 |
楊雄 | 「うん。時遷の言う通り。」 |
石秀 | 「あんな目にあったんだぜ。牛の一頭くらい喰わなきゃ、合わないだろ?」 |
時遷 | 「合う合わないでなくて...」 |
楊雄 | 「喰いきれないだろって...」 |
石秀 | 「いや、俺は死んでも喰うぜ!喰わいでか!」 |
時遷 | 「...」 |
楊雄 | 「...」 |