雷横 | 「おめぇの身体中にあるのってよ、そりゃあばたじゃねぇだろ?」 |
湯隆 | 「ふっ、おめぇだけは気付いてると思ってたぜ。」 |
雷横 | 「おめぇほどじゃねぇけど、俺にだってあらぁな、同じ様な火傷の後がよ。」 |
湯隆 | 「まぁ、俺達の勲章みてぇなもんだからな。」 |
雷横 | 「違ぇねぇな。でも、なんで皆にそう言わねぇんだよ?」 |
湯隆 | 「鼻先にいつも”プロです”みてぇなもんをぶら下げてるのは俺の美意識が許さねぇのさ。」 |
雷横 | 「それでわざわざ嘘吐いてまで...漢だねぇ。」 |
湯隆 | 「何、詰まらねぇ韜晦って奴だな、所謂。」 |
雷横 | 「いや、そこまでの漢とは正直言って気付かなかったぜ。面目ねぇ。」 |
湯隆 | 「よせやい。お互い鍛冶屋仲間じゃねぇか。」 |
雷横 | 「こりゃ、俺もちっとは見習わねぇといけねぇかな?」 |
湯隆 | 「やめときなよ。別に大したことじゃねぇし、誰も気付いちゃくれねぇよ。」 |
雷横 | 「てーかさ、ここんとこ俺もなんつーか、自分のアイデンティティに疑問を持ちつつあったてーかさ...」 |
湯隆 | 「へぇ、そうなのかよ。」 |
雷横 | 「なんか俺ってポリシーがないと言うか、一本筋通ってねぇと言うか、ちょっと考えさせられちゃうことがあってさ。」 |
湯隆 | 「何があった?」 |
雷横 | 「いや、こないだね、公明大哥によ、『なんで鍛冶屋やめちゃったの?』って聞かれたんだけどさ。答えるそばから『なんで?それで?』って突っ込まれて、答えに詰まっちゃってさ。俺って自分で自分のこと判ってねぇなぁ、なんてさ...」 |
湯隆 | 「おめぇ、それで真剣に悩んだのか?」 |
雷横 | 「流石に頭領だと思ったね、公明大哥のこと。俺の浅はかなとこ見てて、ああ言ったんだろうな。」 |
湯隆 | 「馬鹿、違う違うって。」 |
雷横 | 「え?なんで?」 |
湯隆 | 「最近、皆言ってるぜ。『公明大哥の質問癖にも困ったもんだ。思い付きで詰まんねぇこと聞くし、聞いたことすら覚えてねぇし。三歳の餓鬼だってもちったぁマシだぜ。』ってよ。」 |
雷横 | 「...」 |
湯隆 | 「当のこの俺にしたってそうだぜ。『徐寧騙した時って罪悪感感じなかったの?』なんて聞くからよ、ちょっと考えさせてくれって言って、暫くしてから話に行ったんだけどさ...」 |
雷横 | 「うん。」 |
湯隆 | 「『そんなこと聞いたっけ?別に興味ないなぁ』なんて言われちまってよ...」 |
雷横 | 「酷すぎ...」 |
湯隆 | 「だろ?なんか、さも意味ありげな質問しやがんだよな...秦明哥々なんか『奥さん殺されて直ぐ、よく結婚できたよね。なんで?』なんて聞かれたらしいぜ。自分できっかけ作っといて...」 |
雷横 | 「これでいいのかな...」 |
湯隆 | 「...そうだな...」 |