楊志 | 「酒の勢いで言うのも何なんだけどさぁ、ちょっと愚痴っていい?」 |
呼延灼 | 「お前が暗いのは慣れっこだから全然構わないよ。」 |
楊志 | 「言ってくれるね、あんたも...」 |
呼延灼 | 「で、今度はどうした?女にでもふられたか?」 |
楊志 | 「この前ね、珍しく燕順と呑んだんだけどね...」 |
呼延灼 | 「ほう、呑めないのに珍しいな。」 |
楊志 | 「偶々暇な時に誘われてね。でね、その時の話の流れで出たんだけど...」 |
呼延灼 | 「ふむ。」 |
楊志 | 「あいつ曰く、『時々思うんだけどさ、もしかして武挙って簡単に通るの?』なんて言うのよ...」 |
呼延灼 | 「そう言われたからって、お前が落ち込むことないだろうが。」 |
楊志 | 「そうなんだけどさ...」 |
呼延灼 | 「それに武挙自体、そんなに簡単に通るもんでもあるまいし。」 |
楊志 | 「俺もそう思うし、自分は頑張ったつもりよ...」 |
呼延灼 | 「では、お前が気に病むこともなかろう。」 |
楊志 | 「でもね、その後があって、『調練とかで見てると韓滔の腕なんか俺とどっこいどっこいだもんな。やっぱ、家柄とかコネとか金の力らしいじゃん。』なんて...」 |
呼延灼 | 「...痛いところを...」 |
楊志 | 「俺は実力だよ。金もコネも使ってないし、今時楊家なんて言ったって誰も振り向いちゃくれないし...」 |
呼延灼 | 「いや、わしは信じてるよ。楊制司の腕は大したものだし。」 |
楊志 | 「どうも。でね、燕順が言うように、うちらで武挙通ってるのって俺と韓滔だけでしょ?」 |
呼延灼 | 「確かその筈だが...」 |
楊志 | 「でさ、屈折してるかも知れないけど、俺の名誉の回復のために、韓滔を鍛え直してくれないかなぁ、と...」 |
呼延灼 | 「まぁ、あいつとは長い付き合いでもあるしなぁ...」 |
楊志 | 「愚痴だってことは百も承知なんだけどさ...」 |
呼延灼 | 「いや、あいつだってそんなこと言われるのは本意ではあるまいから、一肌脱ごう。」 |
楊志 | 「あぁ、多謝多謝。忝ない...」 |
呼延灼 | 「いや、あいつの腕が上がればわしも大分楽になることを考えれば、楊制司のためばかりとは言えないからな。」 |
楊志 | 「うぅ...今日は呑みましょうよ...」 |
呼延灼 | 「なんだ、漢が泣くなよ。よし、朝まで呑もう。」 |